スクリューボール・コメディ
スクリューボールとは変化球の意味で、ソフィスティケーテッド・コメディ独特の都会的で機知に富んだテンポの良い台詞の応酬やストーリー展開と、スラップスティック・コメディ独特の騒々しいアクションを融合させてそのミスマッチで笑いを誘い、どんなトラブルが起きても必ず全てが丸く収まる結末が観る者を和ませる、ハリウッド黄金期独特のコメディ。
『襤褸と宝石』でのキャロル・ロンバードの演技がスクリューボール的だと評価されたことが名前の由来となり、大恐慌の最中の34年に製作された富豪の令嬢と新聞記者の珍道中を描いたフランク・キャプラ監督の『或る夜の出来事』は、恐慌に落ち込む人々に笑いを提供してスクリューボール・コメディはしりとなる。
おてんば娘と堅物男の恋愛劇を描くハワード・ホークス監督の『赤ちゃん教育』や、バツイチ令嬢と2人の男性の恋愛合戦を描いたジョージ・キューカー監督の『フィラデルフィア物語』など、現代でも十分笑えて楽しめる作品が30年代から40年代にかけて数多く製作された。
また、ケーリー・グラント、クラーク・ゲイブル、キャサリン・ヘプバーン、クローデット・コルベールといったハリウッドを代表する美男、美女たちがドタバタ演技を披露する意外性もこのジャンルならでは。
スペクタクル映画
スペクタクルとは直訳すると見せ物という意味であるが、そこから大がかりで派手な仕掛け、群集やアクション・シーンなどを売りにした映画を指すようになる。
サイレント映画時代はイタリア製のスペクタクル映画が一世を風靡して『クオ・バディス』や『カリビア』といった大作が世界中で好評を博す。
これらの映画に強い影響を受けたD・W・グリフィスは『国民の創生』や『イントレランス』といった長編スペクタクル映画を発表、彼のライバルだったセシル・B・デミルも『十誡』や『キング・オブ・キングス』を製作してスペクタクル映画はハリウッドにとって欠かせないジャンルの一つとなる。
デミルはその後も巨額の制作費をかけて『クレオパトラ』、『サムソンとデリラ』などを製作してハリウッド黄金期のスペクタクル映画の基礎を築いて、スペクタクルの巨匠としてハリウッドに君臨する。