ギャング映画

アメリカの裏の世界を舞台に、夜の大都会に巣食うギャング達の抗争を暴力的に描いた映画を指す。1920年にアメリカでは禁酒法が発令されたが、ギャングたちはこれを破って密造酒を販売し、この利益をめぐったギャング達の抗争が20年代後半から表面化する。
毎日のように報道されるギャング達の抗争のニュースは、映画スタジオの格好の素材となり、メジャー・スタジオのワーナー・ブラザーズ社が先頭に立ってエドワード・G・ロビンソン、ジェームズ・キャグニー、ジョージ・ラフトといった俳優たちを起用してギャングを主人公にした映画を量産する。

ギャング映画が隆盛を極めるのはトーキー時代に入ってからで、効果音の導入による派手なマシンガンや拳銃の轟音、ギャング独特のタンカやスラングなどによってギャング映画の人気は頂点に達し、暗黒街のボスにのしあがった男の栄光と破滅を描くマーヴィン・ルロイ監督の『犯罪王リコ』や、アル・カポネをモデルにした変質的なギャングの数奇な運命を描いたハワード・ホークス監督の『暗黒街の顔役』等の傑作が生まれる。
しかし、犯罪者をヒーローとして描くハリウッドのやりかたに人々は難色を示し、プロダクション・コードによる規制もあって、ギャングはヒーローとしてではなく人生の敗北者として描かれることが多くなる。

サイレント映画

チャールズ・チャップリンや、バスター・キートンのスラップスティック・コメディでおなじみの、セリフや音響の無い映画を指す。サイレント映画のセリフやストーリーは画面と画面の間に挿入される字幕(インター・タイトル)、日本では活動弁士によって説明され、音楽は上映時にピアノやオーケストラによって生演奏された。
効果音や声を録音する必要がないため、防音のスタジオを必要とせず、悪声でも顔がよくて多少演技が出来れば俳優になることができた。

しかし、俳優がしゃべらないとはいえ、カットバック、クローズアップ、移動撮影といった現在の映画の撮影技法やストーリー・テリングを形成したD・W・グリフィス監督による一連の作品や、モンタージュという編集によって製作者の意図を語る手法を確立したセルゲイ・エイゼンシュタイン監督の『戦艦ポチョムキン』など、現在の映画のスタイルを形成した貴重な作品が多く、フランスの前衛映画運動やドイツの表現主義など芸術的な映像表現を追及する実験的な映画もサイレン期に多数製作された。
27年に初のトーキー 『ジャズ・シンガー』が公開されるとハリウッドはトーキーに移行してゆき、チャップリンら数名の映画人はサイレント映画を作り続けるものの、トーキーの発展に反比例してサイレント映画は人気を失ってゆく。

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