西部劇
19世紀後半のアメリカ西部開拓期を舞台に、カウボーイや開拓者たちを主人公にしたアメリカの時代劇とも言える、ハリウッドがもっとも得意としたジャンル。
最初の本格的な西部劇は、史上初めて本格的な筋書きを持った映画としても知られるエドウィン・S・ポーター監督による1903年の『大列車強盗』だと言われている。
それ以後、ウェスタンは人気のジャンルとなるが、内容は陳腐なものが多く子供向けのアクション活劇の域を出ることはなかった。
しかし、ジョン・フォードやハワード・ホークスらの登場によってアクションだけでなく素晴らしい物語を持った良質のウェスタンが数多く登場して、40年代頃までにはハリウッド屈指のジャンルとして定着するようになる。
砂埃が舞い、欲望が渦巻く西部のフロンティアで活躍する人間たちのドラマは、善と悪の対決というシンプルな物語に一括されがちであるが、個人と社会、荒野と文明、西部と東部の闘争を通して語る数々の抒情詩はフォード監督の『駅馬車』や『荒野の決闘』といった伝統的な西部劇から、ミュージカルを融合した『カラミティ・ジェーン』、フィルム・ノワールの影響を受けた『追跡』、リアリズムを重視した『真昼の決闘』など様々なジャンルを網羅し、ジョン・ウェインやゲーリー・クーパーといった数多くの西部劇スターを生み出してゆく。